この記事を読むのに必要な時間は約 6 分です。
要点をざっくり
- 今年は9月から全国の学校でインフルエンザによる学級閉鎖が報告されているなど、過去最悪の感染者数の昨年と同じ傾向で今年の冬も大流行が懸念されています。
- そんな中、インフルエンザの常識が劇的に変わろうとしています。
- 今年3月に誕生した、まったく新しい抗インフル薬・ゾフルーザをご存知でしょうか。
今年からインフルエンザに新薬登場
今年は、9月からインフルエンザが流行しており、過去最悪の感染者数の昨年と同じ傾向です。
今年の冬も大流行が懸念されています。
そんな中、インフルエンザの常識が劇的に変わろうとしています。
いままでのインフルエンザ薬
昨年度の抗インフル薬のシェアは、イナビルとタミフルで約8割を占めています。
イナビル
イナビルとは、2010年に第一三共で開発された、国内で4番目の抗インフルエンザウイルス薬です。
作用的には、オセルタミビル(タミフル)やザナミビル(リレンザ)と同じノイラミニダーゼ阻害薬になります。
インフルエンザウイルスに直接作用し、ウイルスの増殖をおさえます。
一般的なA型とB型ウイルスに適応しますが、C型には効きません。
粉末状の吸入薬で一回の吸入ですみ、全身に及ぼす影響が少なく、副作用の発現も少ないと考えられています。
タミフル
タミフルは、インフルエンザウイルスに直接作用する世界初の飲み薬で、抗インフルエンザウイルス薬です。
インフルエンザウイルスに直接作用し、ウイルスの増殖をおさえます。
一般的なA型とB型ウイルスに適応しています。
経口剤なので、安定した服薬効果が期待でき、インフルエンザウイルスの増殖に欠かせないノイラミニダーゼという
酵素の働きを阻害する作用があります。
しかし、その副作用から子供への投与が問題になりました。
おそらく、私たち大人がインフルエンザにかかって病院に行くと、イナビルを一度吸入することが多いと思います。
(私も一度インフルエンザにかかって、吸入しています)
新しい抗インフル薬・ゾフルーザが誕生
ゾフルーザは、飲み薬として世界で初めて1回飲むだけで、インフルエンザの治療が完了する新薬です。
「従来のタミフルやイナビルは感染細胞内で増殖したウイルスが細胞外に飛び出ることを阻害する仕組み。これに対して、ゾフルーザは感染細胞内で遺伝子レベルに働いてウイルスを死滅させ、より早期の段階から感染を防ぐ仕組み。効き目が強いことから、飲み薬として世界で初めて1回飲むだけで治療が完了。熱が下がるまでの期間はタミフル同様、1~2日間を要しますが、効き目が強いため、服用後の周囲への感染のリスクも減少したと報告されています」
女性自身より引用
現在、インフルエンザでの学校への出席停止の日数も、この新薬の普及で短縮されることが期待されています。
また、ゾフルーザは塩野義製薬がスイスの製薬会社Roche AG(ロシュ)と提携して開発。
(いわゆる日本製)
[注目記事]【塩野義製薬】抗インフルエンザ薬「ゾフルーザ」、ロシュと世界市場を開拓‐手代木社長 https://t.co/FjO2CYkzad pic.twitter.com/4gYG4pKGYv
— 薬事日報ウェブサイト (@yakuji_nippo) 2018年11月2日
この薬はA型とB型どちらのインフルエンザウイルスも治療できるというもので、インフルエンザの症状が出て2日以内の、12歳以上への使用が認められました。
また、新薬というと副作用が気になるところですが、発売元の塩野義製薬によれば、下痢の症状が出る人が約1%でほかにはとくに副作用は報告されていないということです。
ただし、飲み薬は嘔吐を伴う症状に不向きで、インフルエンザ患者でもB型に限り2~3割が嘔吐を伴う消化器症状が出ます。
こうした吐き気の症状がある場合には、吸入式薬が向いているとのことです。
新薬のため少し薬価が高くなりますが、日本で健康保険を使えば今までの治療薬との差額が1000円まではいかないようです。
やっぱり予防接種がいちばんの対策
ゾフルーザは、日本の厚労省だけではなく、アメリカ食品医薬品局(FDA)も、新たなインフルエンザ治療薬として承認したと発表しています。
FDAが新しい作用機序を持ったインフルエンザ治療薬を承認するのは、およそ20年ぶりとのことです。
理論的に言えば、従来の治療薬よりもインフルエンザに対して効果が高いということも認めています。
しかし、FDAでは副作用として、下痢と気管支炎を指摘しています。
そして「年1回の予防接種の代わりになるものはありません」ということもコメントしています。
早めに予防接種を受け、それでもインフルエンザに罹患した場合は、医師にゾフルーザの処方を依頼するのが良いのではないかと思われます。