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部下に「パワハラ 」続けた上司に認識なし
静岡県庁で職員がパワハラで自殺していたことが発覚しました。
部下に暴言を吐くなどのパワーハラスメントをしたのは、静岡県の交通基盤部の課長級の男性職員(59)。
部下の男性職員は2017年3月に自殺。
上司の職員は、その後パワハラの認識もなく通常通り勤務していました。
県の聞き取りに対し上司は「不適切な発言が出た可能性はある」としながらも「パワハラの認識はなかった」「「(パワハラの)故意はなかった」」と釈明しています。
この上司は59歳ですから、シラを切り通して60歳で退職金をもらって退職・・間違っても懲戒免職は避けたいというところでしょう。
部下の1人が死んだくらいで、数千万円の退職金をフイにはできません。
19件の不適切発言
自殺した職員の遺族が、自殺後、この上司の言動を録音しているICレコーダーをみつけ、昨年4月、音声データを県に提出。
県は5日分のデータを確認し、暴言が認められたことから、同年7月に弁護士らを交えた調査委員会を設置し、同僚らに聞き取りをするなど事実関係を調べていました。
調査委員会では、この上司の19件の言動について、名誉毀損(きそん)や人格否定、必要のない指導に当たると判断しました。
不適切発言の数々
・「バカだ」
・「役に立たない」
・「(職員が)1人でやるとみんな駄目になっちゃう」
・「疲れちまう」
・「日本語が書けない状況じゃ、まずいな」
これでも、不適切な発言があった・・・かもしれないというこの上司は、過去にはもっとひどいことを部下にいってきたのでしょう。
上司の懲戒処分が減給のみの理由
静岡県の懲戒処分の項目にセクシュアルハラスメントはあるものの、パワハラはなかったということが、今回この上司の「減給10分の1(3カ月)」という軽い処分の理由でした。
今回は県では自殺ということを鑑みて、これでも無理やり「職場内秩序を乱す行為」の項目で懲戒処分を決めたとのことです。
今まで静岡県庁では、パワハラに対する「懲戒処分」がなかったため、「パワハラはやってはいけないがお咎めなし」でした。
静岡県庁の職員は、上司のパワハラを部下が訴えようものなら、さらにその上司からパワハラを受けるという構造になっていたようです。
これから、県ではパワハラの処分項目を新設する検討を始めたということです。
遺族にしてみれば、「今さら」というところでしょう。
「パワハラ」対する国の指導はない
今回の静岡県庁の懲戒処分を見てもわかるように、法律では「セクハラ」と「マタハラ」に対する防止措置は定められていますが、「パワハラ」にはありません。
パワハラへの国の対策は企業の自主的な努力を促す周知・啓発にとどまり、定義も定まっていません。
今年度、やっと職場でのパワハラを防ぐため、厚生労働省は企業に対し、防止策に取り組むことを法律で義務づける方針を固めました。
経営者側は「指導」との線引きが難しいなどとして反対していますが、増加が続くパワハラ被害を食い止めるには法制化が必要と判断したものです。
今年の通常国会への関連法案の提出をめざすとしていましたが、一歩遅れたようです。
法律がないということを熟知している会社は、これを逆手にとって、表では一所懸命「パワハラ撲滅」をうたって、実際にはパワハラを行なった幹部職員を処分しないところも多く存在します。
私は、早急に「法制化」を望みます。