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要点をざっくり
- 「ジャポニカ学習帳」などで知られるショウワノートが、開いたときに中とじ部分が盛り上がらず、左右の段差ができない「水平開きノート」を発売した。
- 東京都の小さな町工場が開発した技術を、ショウワノートが量産化した。
- この元になったノートは、従業員4人の中村印刷所が開発したもの。
ショウワノートが段差のない「水平開きノート」を発売
「ジャポニカ学習帳」などで知られるショウワノート(富山県高岡市)が、開いたときに中とじ部分が盛り上がらず、左右の段差ができない「水平開きノート」を発売しました。
このノートは、東京都の小さな町工場が開発した技術を、ショウワノートの製造・販売基盤を生かして量産化にこぎ着けたものです。
同社の担当者は「黒板の板書もそのまま写せる。見開きいっぱいのページを自由に使ってほしい」と話しています。
元になった段差のできない「ナカプリバイン」は、中村印刷所(東京)が2014年に開発し、手作りで生産していました。
16年に従業員の孫娘がツイッターで宣伝したところ、3万件以上のリツイートが寄せられ、「おじいちゃんのノート」として話題となりました。
https://t.co/94gYN5pXFO RT @measann 【拡散希望】
— 姫 (@himecal) 2016年1月1日
うちのおじいちゃんノートの特許とってた…
宣伝費用がないから宣伝できないみたい。
どのページ開いても見開き1ページになる方眼ノートです。https://t.co/ty5faYCCeK
これに目を付けたショウワノートが連絡を取り、中村印刷所と特許技術の提供、監修などの契約を結んで1年かけて共同開発を進めてきました。
11月に発売されたノートは、B5判5ミリ方眼30枚で、1冊250円(税抜き)。赤、青など5色を用意しています。
【ニュース】ショウワノート、おじいちゃんノートの技術で全ページが180度水平に開く「水平開きノート」発売。Twitterで爆発的な反応を得た町工場が特許技術を提供して完成した子供用学習ノート。もとろん大人でも活用可能。https://t.co/OvSvau3QIt #おじいちゃんのノート #水平開きノート pic.twitter.com/wIxokReBic
— MdN公式 (@MdN_tsushin) 2017年11月14日
この二人のおじいちゃんが、今までどのメーカーも作れなかったノートを作ってしまったのですからすごい話です。
中村印刷所の社長の話
中村印刷所の中村輝雄社長は、
「小学生向けノートのトップメーカーから出してもらえてうれしい。将来の日本を背負って立つ子供たちにストレスのないノートを使ってほしい。勉強嫌いの子供にも抵抗なく開いてもらえれば」
と話しています。
「ショウワノート」が平らに開く「おじいちゃんのノート」来春販売へ https://t.co/21bSvkeC9P #おじいちゃんのノート pic.twitter.com/Zv8oACGcyS
— イザ!編集部 (@iza_edit) 2016年9月1日
足袋屋がスポーツシューズを作る「陸王」の話とかぶりますね。
下町の小さな印刷工場が作った1冊のノートが、世界に名だたるショウワノートの力でさらに飛躍しています。
確かにこの見開きの段差のないノートは今までありませんし、見開きがあるとコピーをしても黒くなって上手くコピーがとれません。
これからこの特許技術は、ますますノートや本に使われていくのではないでしょうか。
おじいちゃんのノート誕生秘話
この「おじいちゃんの」ノートを作成しているのは、家族4人で営んでいる「中村印刷所」という会社です。
事務所には活版時代の活字や、長年使い続けて年季の入った印刷機などが並んでいます。
印刷業に関しては新規開拓はせずに、これまでの取引先との受注生産がメインですが、その中で新しい分野として3年ほど前から打ち出しているのが「ノート制作」でした。
きっかけは、近くで製本業を営んでいた男性(79)が店をたたんだことだそうです。
「印刷と製本は関係が深い。うちを手伝ってくれないか」と社長の中村輝雄さん(72)が声をかけ、この男性は中村印刷所でアルバイトとして働くことになりました。
今回のツイートの主はこの男性の孫娘です。
2年間かけて社長とこの男性が2人で試行錯誤の末に完成させたのが、見開きいっぱいまで使える方眼ノートでした。
この製造方法に関して中村印刷所として「特許」をとりました。
高い技術は評価されましたが、なかなかノートが売れず数千冊の在庫を中村印刷で抱えてしまいます。
このアルバイトの男性は、罪悪感を感じ孫娘にノートをまとめて渡しました。
「これ、学校の友達にあげてくれ」と。
そしてこの孫娘が、元旦に軽い気持ちでツイートしたところものすごい反響があり、続々と注文が殺到したのだそうです。
こういう「奇跡のような話」が本当にあるんですね。